エアコンの電線が短い⁉️(連絡線、渡り線)
量販店でエアコンを買ったのに取付してくれなかった!?
そんなことがあるのかと思うかもしれませんが実際にあった話です。
「線が短いから出来ません」と帰って行った
ある日お客様より電話がありました。
「某量販店でエアコンを買い、取付前に現場を確認したいと業者が先ほど来たのです。ただ・・・『「線」が短いので延長を電気工事店に依頼して延長してください』と言われたのですが・・・」(お客様も内容がよく分からないような雰囲気でした)
電話だけの情報から推測するとエアコン用のコンセントが取付位置の近くになく、床に近いコンセントまでエアコンの電線が届かないので延長をして欲しいと言う意味だと思っていました。
現場を見てみるとそうではなかったのです。
線と言うのは「渡り線(連絡線)」でした
渡り線(連絡線)は室内機から室外機に電力を供給する線であり、信号も送っている重要な線です。
これがないと室外機が稼働しませんし、温度設定や冷房・暖房の信号を室内機から伝えられません。
「Fケーブル」と呼ばれる3線の電線のことを指します。
問題は隠蔽配管(いんぺいはいかん)にあり?
普通ベランダに室外機を置き、部屋に室内機を置くのでなんの問題もなく設置工事が出来ます。
ところが主にマンションで見られる隠蔽(いんぺい)配管がこの「設置出来ない問題」を引き起こしています。
壁の中や天井裏の見えないところに冷媒管とドレンが配管されているからです。
室外機と室内機の距離が遠い場合にこう言う工法を使うことがあります。
例えば、玄関側の部屋のエアコンの室外機が玄関とは反対側のベランダにある。
室内機と室外機の距離10m位の時もあります。
壁内や天井裏に隠されて配管されているのでこの既存の配管を再利用するしかないです。

エアコン冷媒管の隠蔽配管
短い線(渡り線)も一緒に配線されている
冷媒管と一緒に渡り線(連絡線)も一緒に配線されています。
さらに悪いことに渡り線は冷媒管にテープで固定されているので渡り線だけを引き抜くことができない。
渡り線(=連絡線)を新しい線に交換出来ませんので、既存の線を利用するしかない。
もし渡り線を交換するのであれば壁や天井を壊さなくてはなりません。
壊したら復旧工事が必要ですので、現実的ではありません。(→リノベーションの時にやっておいた方が良い。
従って一般的には配管を再利用、その配管がダメだと設置不可となる訳です。
依頼内容は「渡り線の延長が必要」だった
「ケーブル(電線)」で室外機に電源を供給しますが、このFケーブルが短いのであれば単にFケーブル(電線)を延長すれば良いだけの話ではないでしょうか?
しかし量販店のエアコン工事の人は渡り線(=連絡線)の延長はしてくれません。
今回の依頼は『隠蔽配管の(渡り線)Fケーブルが短かいので、延長してほしい』と言うことでした。

渡り線(連絡線)も冷媒管も短い隠蔽配管
渡り線の延長はメーカーがNGとしている!?
渡り線(=連絡線)の延長はメーカーが認めていないので(家電量販店の取付業者は)工事をしないと言う情報を入手しました。
この件の後「線が短いので工事が出来ない」と工事を断られた、と電話が多くなりました。
実際に工事をしてみると渡り線よりも冷媒管が短いことが多い

冷媒管延長の様子
延長工事は渡り線だけではありません。
短ければ冷媒管も延長も必要ですがお伺いするとだいたいの場合冷媒管も長さが足りない事が多いです。
冷媒管の延長は出来るだけ無い方が良く、つまり室内機から室外機まで1本の冷媒管が通っている方がガス抜けなどのリスクが少ないのです。
また冷媒管は銅管なので短ければ短いほど曲げる事が難しいのです。
あと2センチ足りないと言う場合は10センチ、15センチと長さを考えて1回切断します。
その後に曲げられる長さを考えて新しい銅管を接続し直します。
ガスが抜けないように接続部は適切なトルクで締めなければいけません。
この冷媒管の切り回しが出来るかどうかは、壁から出ている配管の長さや状況によります。
また配管の直径が異なることもあり、現在は2つの銅管は2分(にぶ)と3分(さんぶ)が一般的ですが、中には2分と4分と言う直径の管があります。
冷媒管の用意も必要なので、事前調査が必要です。
隠蔽配管なので取り換えることは出来ませんからジョイントを4分から3分に変換するものを使用しますがこの配管が古い場合は「漏れ」のリスクがあります。

室外機の冷媒管が短い
ドレン管の問題
ご存じの通りエアコンの室内機からは結露した水が出ます。
通常は外に出しているのであまり気にすることはないと思いますが、隠蔽配管の場合、排水管がないとエアコンが設置出来ません。
普通は壁の中に塩ビ管の排水専用管があります。
この排水管が勾配が悪いとか、壁の奥の方にあって接続できないなどと言うこともあります。
その為私たちはドレンで「水漏れ事故」が起きないように十分注意して作業をしております。
壁の中で手が入らない場合だと壁を部分的に壊さなければならないこともあります。(こう言う場合は別途工事ですが、部材がないと当日出来ないこともあります)
※下の画像のように冷媒管と連絡線は壁から出ていますが、ドレン管が見当たりません。

ドレン管がない
隠蔽配管の場合の3つの確認ポイント
次の3つのポイントを確認する必要があります。
- 連絡線(通信線=被覆がグレーで中に3本の銅線があるもの)
- 冷媒管(銅管=現在は2分=6㎜と3分=10㎜の直径の管が2本、保温材で巻いています)
- 排水管(エアコンから出た水を外に排出する為の管です)
この3つが1つでも満たされないと取付が出来ません。
注意】徐々に冷えなくなってきたエアコンを交換する場合は冷媒ガス漏れの可能性あり
冷媒管が長年の使用で劣化している場合、新しいエアコンに交換しても冷えなかったり温まらなかったりします。
まれにピンホールと言って針で刺したような穴が開くこともあり、いくら小さな穴とは言え1年~2年を掛けて冷媒ガスが漏れてなくなってしまいます。そうなるとエアコンが効かなくなります。
エアコンが効かないから新しいエアコンにすると言う場合にはガスが抜けていないかを確認する必要があります。
また、エアコンの取り外しの時に冷媒管を無理に曲げてしまうと冷媒管を破損してしまい、ガス抜けが発生してしまうこともあるので乱暴に外すのは危険です。
※ 実際に配管の劣化の為取付をして1年近く経過したらエアコンが効かなくなったと言うケースがあります。
一般的に連絡線は延長できます
話は元に戻りますが、連絡線の延長はやってくれる工事店は多いと思います。(殆どの業者で連絡線を延長して不具合が出たと言う事象を聞いたことがないので)
取付工事費
一般的なエアコンの取付の標準的な工事費は25000円~(税抜き)です。
但し、必ず現地調査をして状況を確認させて頂いて金額を提示しております。
※工事のみはお受けしておりません
保証出来ない項目について
既存の隠蔽配管
既存の隠蔽配管は保証できません。(当社で設置(配管)したものではありません。また古い冷媒管ですのでピンホールや劣化も考えられます)
※ 交換前のエアコンは何の問題なく動いていたので隠蔽配管を保証して欲しいとのご要望もありますが、保証は出来ません。

エアコン取付
隠蔽配管はメンテナンスが出来ない
どうしても隠蔽配管にこだわる場合は壁や天井を剥がして配管を入れ替えてまた壁や天井を元通りに戻す工事は出来ます。(ただし、住みながらの工事はほぼ不可能と考えた方が良いでしょう)
見た目にこだわりはない、と言う方には露出配管をお勧めしますが、マンションの場合は鉄筋コンクリートの壁に孔を開けなければならないので管理組合に予め届出書を出して許可が下りてからの工事になります。
本来取付が出来ない部屋にエアコンがあるのは夏は恩恵を感じるでしょう。
その意味で隠蔽配管はなくてはならない設備です。
しかし冷媒管を壁や天井に閉じ込めるのでその後のメンテナンスが出来ないのが欠点です。
隠蔽配管は致し方ないですね。
結論
連絡線(通信線)の延長は出来ます。
隠蔽配管のエアコン設置工事は出来ますが現地調査が必要ですのでご連絡下さい。
事例
このブログ作成の後、世田谷区の方からご連絡を頂きやはり量販店で購入したのだけれど取付をしてくれなかったと言う事例がありました。
幸い、エアコン本体がキャンセルでき、弊社でエアコンを取り寄せ交換工事までをさせて頂きました。
何か困った事があればお気軽にご相談下さい
※量販店のエアコン工事をしている方からコメントが入りました(どこのどなたかは明記されていませんでしたが)。それによるとメーカーの指定により延長が出来ないのだとのことでした。延長をしない、と言うことは壁や床を剥がして配線を新たに入れ替えなければなりません。メーカーはそれを承知で指示していると言うことでしょうか。職人はメーカーと契約している場合、メーカーでNGと言われる工事をすることはできません。全てが職人の責任とは言えないようでもあります。